菱屋善兵衛「凛」~アールヌーヴォーの香り
アール・ヌーヴォーは、19世紀末~20世紀初頭の約30年にかけて、ヨーロッパやアメリカでおこった革新的な芸術運動です。
そのコンセプトは、「産業革命以降、粗悪になった実用品に芸術性を取り戻す」というものでした。この美術様式の登場により、絵画、インテリアなど多くの分野で芸術家が活躍し、草花や昆虫など「自然」の動植物をモチーフに幻想的な色合いで彩るといった美術品が数多く作り出されました。
その文様に描かれる花の種類は、あざみ、たんぽぽ、すずらん、水仙、クロッカス、睡蓮といった野の花のような素朴なものが多く、当時流行していたジャポニズムの影響を強く受け、ヨーロッパの感覚では抜きがたい立体感の表現を捨てて、浮世絵に見られるような平面的かつ装飾的な空間構成が取り入れられています。
そんなアール・ヌーヴォーのデザインを、菱屋善兵衞の技で現代に甦らせたのが袋帯「凛」です。
弊社が研究を重ね、明治・大正時代の生地の復刻に成功した「蔵」シリーズと同様、縦糸と横糸の込みを一般の帯の2倍細かく織り込むことにより、文様がきめ細かく表現されています。